週末の夜に観たいアクションが、ひとつでは足りない。そんな贅沢な状況が、2026年の金土ドラマ枠で生まれています。
SBSで快走するソ・ジソブ主演『キム部長』と、MBCでテレビ放送が始まったイ・ドンウク×キム・ヘジュンの『殺し屋たちの店』。どちらも危険な世界を描くKドラマですが、見せたいものも、視聴者を引き込む方法もかなり異なります。
視聴率競争という言葉だけでは収まりきらない今回のドラマ対決。豪快な一撃で気分を晴らしたい夜と、張り詰めたサバイバルに没入したい夜。リモコンを持つ側には、なかなか難しい選択になりそうです。

15%超えでスタートダッシュを決めた『キム部長』
SBSの金土ドラマ『キム部長』は、放送2回目で視聴率15.7%を記録しました。初回の9.5%から大きく伸ばしており、週末ドラマの中心に早くも名乗りを上げた形です。
作品の魅力は、ソ・ジソブという俳優の重みを正面から生かしているところにあります。細かな説明よりも、彼が画面に立った瞬間の緊張感で物語を動かす。相手に向き合う姿勢や拳の出し方までが、単なる派手なアクションではなく、人物の覚悟として見えてきます。
もちろん、重苦しいだけではありません。仕事や日常で抱えた小さな苛立ちまで、勢いよく吹き飛ばしてくれるような痛快さがある。週末に「難しいことはひとまず置いて、一本筋の通った主人公を見たい」と思う人には、かなり相性のいい作品でしょう。
『キム部長』は、いわば王道のハードボイルド・アクションです。主人公の強さを気持ちよく味わいながら、次の展開へ乗っていける。だからこそ視聴率の伸びにも、納得感があります。
『殺し屋たちの店』は“店”という日常を危険な場所に変える
MBCでは夏の特選シリーズとして、『殺し屋たちの店』の放送がスタートしました。もともとはDisney+で先行公開された作品で、叔父チョン・ジンマン(イ・ドンウク)が残した謎のショッピングモールをめぐり、姪チョン・ジアン(キム・ヘジュン)が殺し屋たちに狙われるサバイバル・アクションです。
この作品が面白いのは、設定の入口があまりにも身近なことです。ショッピングモールと聞けば、普通は買い物や配送を連想します。ところが、そこには命を狙われる理由と、叔父が隠していた危険な過去がある。日常に見える場所が、少しずつ逃げ場のない空間へ変わっていくのです。
イ・ドンウク演じるジンマンは、感情を大きく見せるタイプの人物ではありません。その静けさがむしろ不穏で、「この人は何を知っていたのか」という疑問を残します。一方のジアンは、突然放り込まれた極限の状況で、自分の力で生き残る方法を探していく存在です。
アクションの迫力だけでなく、叔父と姪の関係が物語の芯になっている点も見逃せません。過去を知るジンマンと、何も知らないまま答えに近づくジアン。二人の間にある距離が、追跡劇の緊張感をさらに濃くしています。
同じアクションでも、気持ちよさの種類は正反対
『キム部長』と『殺し屋たちの店』は、ともにアクションを軸にしています。ただし、視聴後に残る感覚はかなり異なります。
『キム部長』が届けるのは、主人公の強さを信じて見守る楽しさです。ソ・ジソブの存在感を中心に、物語は前へ進んでいきます。危機が訪れても、「この人物なら何とかしてくれるかもしれない」と期待しながら見られる。その安心感が、王道ドラマならではの爽快さにつながっています。
対して『殺し屋たちの店』は、誰が味方なのか、どこまで危険が迫っているのかが読み切れません。こちらは安心して見守るというより、ジアンと一緒に周囲を警戒しながら見る作品です。画面の空気まで冷たく感じるようなスタイリッシュさがあり、ひとつの情報が出るたびに物語の見え方が変わります。
つまり、前者は“熱い一撃”を楽しむドラマ。後者は“静かな緊張”に浸るドラマです。金土ドラマという同じ舞台に立ちながら、競争というより、週末の気分に合わせて選べる二つのアクションになっています。
OTT作品の地上波進出が広げる週末ドラマの選択肢
Disney+で見逃していた人にとって、『殺し屋たちの店』の地上波放送は、作品に触れる新たな機会です。すでに配信で楽しんだ人も、テレビ放送を通して改めて緊張感のある世界へ戻ることができます。
近年は、配信で評価を得た作品が地上波で新たな視聴者と出会う流れも目立ちます。最初からテレビ放送を前提に作られた作品とは異なるテンポや映像の見せ方が、金土ドラマのラインアップに加わる。これによって、週末のテレビ時間はますます多彩になっています。
『殺し屋たちの店』のような作品が地上波に登場すると、従来の視聴率だけでは測れない広がりも生まれます。配信で話題になった理由を確認したい人、イ・ドンウクとキム・ヘジュンの共演に惹かれる人、サバイバル要素の強いKドラマを探している人。それぞれが別の入口から作品へ入れるからです。
勝敗よりも、どちらの週末を選ぶか
数字の上では『キム部長』が強いスタートを切っています。ただ、視聴率競争だけで「勝者」を決めるには、今回の金土ドラマ対決は少し惜しい気がします。
ソ・ジソブの一撃でスカッとしたいなら『キム部長』。イ・ドンウクとキム・ヘジュンが作る、危険で謎めいた世界に引き込まれたいなら『殺し屋たちの店』。欲しい刺激が違うからこそ、二作品はきれいに住み分けられます。
2026年の週末ドラマは、ひとつのヒット作を追うだけでは終わりません。熱量のある王道アクションと、配信発の洗練されたサバイバル劇。その日の気分で選べること自体が、今のKドラマを追う楽しさの一つです。


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